4-6 酔った勢い

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「ヴィ――」  最初の音しか紡げなかった。  押しつけるように唇が重なり、名前を呼ぼうと開けたサヴィトリの口にぬるい液体が注ぎ込まれる。 「っ……ん、ぁ……」  先ほどまで飲んでいたアップルシードルと同じにもかかわらず、サヴィトリにはまったくの別物に感じられた。口に入った瞬間から、かっと身体が熱くなる。むせ返るほど酒気が強く、とろりと濃く甘ったるい味がした。  サヴィトリは嚥下(えんげ)しきれず、うっすらと黄味を帯びた液体が一筋の線となり、唇の端から流れ落ちる。 「……っ、はぁ、ヴィクラム、待って、説明を」 「ムラムラした。一度は理性が勝ったが、やはり我慢できない」 「結論だけ言うな! それじゃわか……んっ、こら……は、ぁ……なし、を……!」  ヴィクラムはサヴィトリの話を無視し、アップルシードルの痕跡をなぞるように唇を押し当てていく。  服の襟元を緩められ、唇が鎖骨に到達したところで、サヴィトリの身体がぐらりと後ろに傾いた。宿のベッドは硬く、打ちつけた頭と背中が地味に痛い。
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