4-6 酔った勢い

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「俺は心が狭くなったのかもしれない」  ヴィクラムはサヴィトリの右手を握り込み、ベッドに押さえつけた。ほとんど体重がかけられておらず、振り払おうと思えばできる程度の強さだった。 「何もないのはもちろんわかっているが、ヨイチと楽しげにしているところを見て、頭に血がのぼった」  ともすれば見逃してしまいそうなくらいほんの少し、ヴィクラムの頬に朱が差す。 (さっきヨイチ殿が言っていたように、本当に妬いていたってこと?)  サヴィトリは口をつぐみ、笑ってしまいそうになるのを堪える。ヴィクラムに似合わない子供っぽさが可笑しかった。 「カイラシュがお前に抱きついているところを見ても特に何も思わないのだがな」 「カイの場合は単純に抱きついているんじゃなくて、『無意味かつ唐突に触れることによって私に怒られるのを最終目的とした度し難い行為』だから……」 「あいつの考えはよくわからないな」 「わからないまんまでいいと思う」  万が一にでもカイラシュの性癖を理解し、ヴィクラムまであの調子で接してくるようになったら世も末だ。
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