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二人を戦闘不能にして逃げる、という手もあるが無謀だろう。数的不利な上に実力差があり過ぎる。
自分の夢の中なのだから自由にできても良さそうなものだが、習得している技術や身体能力などは現実に準拠していた。現実の自分を越える事はできない。
「何をなさるおつもりなのですかサヴィトリ様!」
「自害」
サヴィトリは短く答えた。夢幻相手にまともに取り合う必要はない。
「いくらサヴィトリ様のご意志といえど、さすがにそれは看過できません」
カイラシュがぐっと力を込めると、氷の刃が粉砕された。
氷といっても、術で生成されるものは通常より遥かに純度・密度が高く硬質で耐久力に優れている、はずだ。こうもたやすく壊されると術士として自信がなくなってくる。
「何度でもお止めする所存ではありますが正直面倒なので、不自由を強いることをお許しください」
敬っているようで敬っていないことを言い、カイラシュはつけていた髪紐をほどいた。まったく癖のない紫苑の髪が腰のあたりまで流れる。
今日のカイラシュはいつもと違って髪を一つ結びにし、化粧もしていない。
サヴィトリは反射的に身体を引いた。女装をしていないカイラシュには、警戒心が働いてしまう。
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