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「その様子だと、やっぱり自分の意思で引きこもってたわけじゃないんだね」
ジェイはサヴィトリの目の前に手を突き出した。そこには小さな香炉が乗っている。
「これがベッドの下に置いてあった。中身は術法院で調べてもらってる。十中八九、睡眠——あるいはもっと強い、昏睡作用があるお香だと思うけどね」
ジェイの話を聞きながら、サヴィトリは香炉を手に取った。
何の変哲もない香炉だ。サヴィトリに見覚えはない。
「誰かが私を衰弱死でもさせようとしていたってこと?」
サヴィトリは口元に手を当てて考え込む。
単純に寝るだけの部屋としか使っていないため、サヴィトリの私室には城内の人間であれば誰でも入ることができる。就寝時以外は施錠もしていない。
「それはあわよくば、ってとこじゃない? せいぜい脅しでしょ」
「でもジェイが起こしてくれなかったら……」
嫌な想像にうすら寒いものを感じ、サヴィトリは自分の肩を抱いた。
「まぁまぁまぁ、最悪なことは回避できたんだからとりあえずおっけー! それよりご飯にしよ! 一応冷めても美味しいやつは作ってきたけど、起き抜けにはちょっと重いかも。ちゃちゃっと消化に良さそうなもの作ってくるよ」
ジェイは軽い調子でサヴィトリの背中を叩くと、部屋から出ていった。
扉が閉まった途端、耳が痛くなるほど部屋が静まり返る。
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