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(……違う。馬鹿。ダメだ。現実逃避してる場合じゃない。私がやらなきゃいけないのは、内通者を見つけて徹底的に叩き潰すこと。力を示さなきゃ、私なんかいいように使われる)
サヴィトリは水に濡れて重くなった髪をごしごしと擦った。額は赤く腫れて熱を持っている。
(相手がこんなに早く搦手に切り替えるってことは、正攻法は諦めたのかな。寝る時も用心しないと。誰かに見張っててもら――えるような人材がいない。カイとヴィクラムは絶対ダメ。ナーレは睡眠耐性ががばがば。消去法でジェイ?)
シャンプーを大量に手に取り、過剰に泡立てて頭に乗せる。
(『全員平等に好きだ。だからいっそのことシフト制で付き合おう』——か。本当にそれくらい強いことを言えるメンタルがあれば良かったのに)
広く喧伝してもらうために、会議室の外で聞き耳を立てていた存在に対して言った口上を思い出す。この台詞を考えたのはジェイだった。
(あんまりゆっくりしていると、ジェイを待たせてしまうな)
サヴィトリは手早く身体を洗い、シャワーで泡を流す。濡れた猫のように身体を振るって水滴を払い、浴室を後にした。
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