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サヴィトリは答えられなかった。視線が泳いでしまうのを止められない。
ここで安易に頷くのはみんなに対して失礼だろう。疲れているのは事実だが、すべての原因は自分にある。
自分が、次期タイクーンとして誰もが相応しいと認める高潔な人物であったなら、派閥ごとき気にする必要はなかった。求心力があれば、内通者が活動できるような土壌にもなっていなかったはずだ。
(……やめよう。また悪い癖が出てる。自分を責めるよりも先に、他にすべきことがある)
よくない考えに囚われる前に、サヴィトリは意識的に思考を断った。
「心配してくれてありがとう。まだ大丈夫。本当にダメになりそうだったら、ちゃんと言うから」
サヴィトリはゆっくりとまばたきをし、ジェイの手に自分の手を重ねる。
「っていうかダメになる前に教えてね。ダメになってからじゃ遅いんだから」
ジェイは眉間にしわを寄せて怒った真似をし、手を離した。
「ジェイはどうして私に優しいの? 罪滅ぼし?」
サヴィトリは離れていく手をつかんで引きとめた。
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