5-5 一番じゃなくていい

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 サヴィトリは答えられなかった。視線が泳いでしまうのを止められない。  ここで安易に頷くのはみんなに対して失礼だろう。疲れているのは事実だが、すべての原因は自分にある。  自分が、次期タイクーンとして誰もが相応しいと認める高潔な人物であったなら、派閥ごとき気にする必要はなかった。求心力があれば、内通者が活動できるような土壌(どじょう)にもなっていなかったはずだ。 (……やめよう。また悪い癖が出てる。自分を責めるよりも先に、他にすべきことがある)  よくない考えに囚われる前に、サヴィトリは意識的に思考を断った。 「心配してくれてありがとう。まだ大丈夫。本当にダメになりそうだったら、ちゃんと言うから」  サヴィトリはゆっくりとまばたきをし、ジェイの手に自分の手を重ねる。 「っていうかダメになる前に教えてね。ダメになってからじゃ遅いんだから」  ジェイは眉間にしわを寄せて怒った真似をし、手を離した。 「ジェイはどうして私に優しいの? 罪滅ぼし?」  サヴィトリは離れていく手をつかんで引きとめた。
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