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5-6 Joker
「居場所も何も、ジェイは私にとっていなくてはならない人だよ」
髪を撫でられていることに落ち着かなさを感じつつ、サヴィトリは答えた。
「カイに疑わしいところがある以上、ジェイなしには三派閥のことは探れない。ジェイが裏切らないことを前提に、私は動いている」
「……まぁ、サヴィトリがそう言うだろうなーとは予想してたけどさ。いま俺がお願いしてるのはそういうことじゃないんだよ」
ジェイはサヴィトリの金の髪を指先に巻き付ける。
「俺もカイラシュさんやヴィクラムさんみたいに迫ったらいい?」
「もしもそのような分不相応かつ不埒極まりないことをした場合、貴様のこの矮小な頭を胡桃のように粉砕させていただきます」
指が長く作り物のように美しい手が、ジェイの頭を鷲掴みにした。力が込められているようには見えないのに、みしみしと生理的に嫌な音がする。
「えー、出てくるの早いなぁ。紳士協定はどうしたんです? 今は俺のシフトですよ」
ジェイはサヴィトリの方を向いたまま朗らかに笑う。
サヴィトリは椅子ごと後退った。ジェイの背後にいる、目視できる殺気をまとった人物の凶行に巻き込まれたくはない。
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