5-6 Joker

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 底冷えがし、サヴィトリは無意識のうちに腕をさすった。  ジェイが調理師見習から爵位を得るまで成りあがった理由の一端を見た気がした。 「……申し訳ありません、サヴィトリ様。急用を思い出しましたゆえ、失礼いたします」  カイラシュは口元を手で押さえ、ほとんど走るような速度で退出した。 (やっぱりカイは何か知っている、あるいは関わっているのか)  サヴィトリは気分が塞ぐのを感じた。 (いつもなら鬱陶(うっとう)しいくらい気にしてくれるのに)  テーブルの上で頬杖をつく。必要な肉さえ失われ、顎や頬の骨の感触が生々しい。  サヴィトリ自身が気付かないことでも気付くのがカイラシュだ。誰の目にも明らかな変化すら見過ごすなど尋常ではない。 「なんだかんだサヴィトリってカイラシュさんのこと好きだよね」  ジェイはおおげさ過ぎるため息をついてみせた。 「……そういう風に見える?」  サヴィトリは数秒考えてから、尋ね返した。  ジェイの言わんとしているところが何かはわからない。だが他人からどう見られているかを知れば、自分の気持ちの在処(ありか)がわかるかもしれない。  皆が言う本当の意味で、誰のことが好きなのか。
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