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「ぼんやりしてると、俺にすらつけ込まれちゃうよ?」
軽薄な警告の直後、一瞬だけ唇が重なった。
ジェイがさっき食べていたリンゴの味と香りがする。そう知覚した途端、サヴィトリの体温が上がった。
離れていくジェイの唇にいつもの笑みが戻る。
「あはは、やっぱダメだ。恥ずかしい。慣れないことはするもんじゃないね」
ジェイは顔の熱を冷ますようにぱたぱたと手であおいだ。
「あんまり長居すると俺らしくないことしそうだから、もう行くね。でも、何か用事があったら遠慮なく呼んでくれていいから」
何度か足をもつれさせながら、ジェイは部屋から出て行ってしまった。
(……いろいろわかんない)
サヴィトリはテーブルに突っ伏した。テーブルの冷たさが熱を帯びた頬に気持ち良い。
(処理が追い付かない。頭破裂しそう)
何日も寝ていたはずなのに目蓋が重くなってきた。
(自分のことなのに自分がわからないって、なんでかな。思ったより、私バカなのかも)
この体勢なら熟睡はしないだろう、とサヴィトリは睡魔に身を任せた。
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