1-3 陽光姫と四人の恋人

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「それじゃあ、最後に確認ね」  結局ジェイは何も言うことがなさそうなので、サヴィトリは集会を終わらせることにした。 「軍部最大派閥である左丞相派のけん制に当たってもらうのは、魔物討伐専門部隊『羅刹(らせつ)』三番隊隊長ヴィクラム・キリーク」  サヴィトリが名を呼ぶと、ヴィクラムは表情を引き締めた。  後ろにきっちりと撫でつけた赤い髪に藍色の瞳。彫りが深く整った面差し。見上げるほどの長躯と屈強な身体つきと相まって、四人の中で一番わかりやすく男らしさを感じる。 「上級貴族と文官で構成される右丞相派はジェイ。今はもう養子に入ったから、近衛兵じゃなくてヤーマ伯、だよね?」  サヴィトリが尋ねると、ジェイはにこっと人好きのする笑顔で頷いた。  人畜無害そうな顔をしているが、宮廷調理師見習いから近衛兵を経て、クベラ国南方に領地を持つヤーマ伯にまでなった傑物だ。見た目通りでないことはサヴィトリもよく知っている。
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