第1章 1-1 シフト制にはワケがある

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 カイラシュは薄く紅をはいた唇に笑みを浮かべ、頭を垂れた。束ねた(すみれ)色の髪に刺したかんざし飾りがしゃらりと揺れる。  もったいぶるようにゆっくりと、カイラシュは三人の男にそれぞれ一枚の紙を手渡した。所作こそ丁寧だが、三人に対して向けた視線には殺意がこもっている。カイラシュは以前から蛇蝎(だかつ)のごとく三人を嫌っていた。  サヴィトリは一瞬だけ、視線を会議室の大扉の方へと向ける。扉はきっちりと閉ざされている、ように見えた。 「これは?」  紙に指を叩きつけ、不機嫌さ全開で尋ねたのはナーレンダだ。空色の髪をした華奢な美少年といった見た目だが、この場にいる中では最年長だ。  カイラシュが配った紙には表が書かれていた。縦軸には四人の名前、横軸には日にちが記載されている。 「シフト表」 「はぁ?」  サヴィトリの回答に対し、ナーレンダは食い気味に聞き返した。色素の薄い額には青筋がくっきりと浮かんでいる。
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