第2章 2-1 オールジャンル対応型補佐官

2/6
前へ
/175ページ
次へ
「雨は嫌ですね、頭が痛くなります」  サヴィトリと同じように窓の外を見ていたカイラシュが呟いた。 「ごめん、大丈夫? やりすぎた?」  サヴィトリはカイラシュの隣に移動し、顔を覗き込む。  心なしかいつもより肌が青白い。血色の悪さをごまかすように、頬紅や口紅の色が濃かった。 「お気を遣わせるようなことを言ってしまい申し訳ありません。雨や、雷が、昔から苦手で」  カイラシュは口角を少し持ち上げ、内側についているカーテンを閉めた。 「出かける日をずらした方が良かった?」  今日は「恋人の一人であるカイラシュとお忍びで、クベラ国北東部にあるシシリー港に視察――という名のデートに行く」ということになっている。国所有の王族専用馬車に乗っている時点ですでに忍んではいないのだが。  これはもちろん刺客をおびき寄せるための罠だ。罠としてはあからさますぎるが、カイラシュと御者以外に供回りは付けていない。この機を見逃すような腰抜けであれば、捨て置いてもいいだろう。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加