第2章 2-1 オールジャンル対応型補佐官

3/6
前へ
/175ページ
次へ
「いえ、こういった天候の日の方が襲撃の可能性が高いでしょう。雨が痕跡を流してくれますからね」 「体調が悪いなら無理しないでいいよ。私一人でもなんとかなるから」  サヴィトリは左手の中指にはめた銀の指輪を撫でる。  空色のターコイズを戴くその指輪は、サヴィトリの武器だ。 「やはりサヴィトリ様にとってイェル術士長は特別ですか?」  カイラシュはターコイズの指輪をじっと見つめる。 「うん? ナーレも、ヴィクラムも、ジェイも。もちろんカイも。みんな特別だよ」  質問の意図がわからず、サヴィトリは首を傾げた。  ターコイズの指輪は、サヴィトリが子供の頃にナーレンダから贈られたものだ。指輪に特別な意味はなく、護身用として渡した、とナーレンダは言っている。本人が言うのだからそうなのだろう。 「まったく。本当にそういうところですよ、サヴィトリ様」  カイラシュは重苦しいため息をつき、サヴィトリの左手を取った。自分の口元まで運び、爪の先にくちづける。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加