第2章 2-1 オールジャンル対応型補佐官

4/6
前へ
/175ページ
次へ
(確か『サヴィトリ様を恋い慕う一人の男として接します』って言ってたけれど、いつもと何が違うんだろう)  ふとサヴィトリの中に疑問がわいた。  カイラシュは常日頃から気安く触れてくる。抱きついてくることもしばしばあった。「好き」だとか「慕う」も挨拶以上に浴びせられている。 (どう見ても女の人だから、あんまり警戒心が働かないんだよね)  サヴィトリは仔細を暴くつもりでカイラシュを注視する。  化粧の施された顔はどんな女性よりも艶やかで華があった。美人は三日で飽きるというが、見れば見るほど惹きつけられる。  手にも性別がない。節を感じさせずほっそりと長く伸びた指は、陶磁器でできた作り物のようだ。爪は光を照り返すほど磨かれ、短く切り込まれている。  男性っぽさが垣間見えるのは声くらいのものだ。聞き取りやすい、男性としてはやや高めの澄んだ声をしている。 (あの時はちょっとびっくりしたけれど)  耳元で囁かれ、頬にキスをされた時のことがサヴィトリの脳裏によぎった。体温が上がるのを感じる。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加