第2章 2-1 オールジャンル対応型補佐官

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「あのさ、カイは補佐官でしょう。補佐官は王族とは婚姻を結んではいけないって、ナーレから聞いた。それなのに、どうしてあんなこと言ったの」  サヴィトリは自分の手を引き戻し、服の胸元を握りしめた。  わけあって赤子の頃からクベラ国とは無縁の環境で育ったサヴィトリには、王族や国主として必要な知識や作法、経験がない。それらを補うため、教職としても働いているナーレンダを講師に据えて教育を受けている。  補佐官との婚姻については、歴史の勉強している時に聞いた話だったとサヴィトリは記憶している。  補佐官は特別な職だ。太師、左右丞相と並ぶクベラ国の最高位の官職であり、アースラ家の当主が世襲する。  役割は、公私問わずタイクーンの望みを叶えること。その職務の都合上、タイクーンと親密になりやすかった。過去に幾度となく色恋に端を発したもめ事が起こったらしい。当時は女性当主が多かったことも一因だ。  現在ではアースラ家の当主は男性のみとされ、王家に連なる者との婚姻は固く禁じられている。
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