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2-2 襲撃者
次の瞬間、サヴィトリは嫌な浮遊感に襲われた。
視界がぐるりと回る。気持ちが悪い。内臓ごと押し上げられているようだ。
サヴィトリが気付いた時には、カイラシュもろとも車体から投げ出されていた。雨でぬかるんだ地面に受け止められる。
「大丈夫ですか、サヴィトリ様」
「私は平気。カイこそ大丈夫?」
カイラシュがクッションになってくれたおかげで、サヴィトリの身体にはどこにも痛みはない。つまり、その分の衝撃をカイラシュがすべて受けたということだ。
「サヴィトリ様の重みを全身に感じることができて歓喜の極みです」
「離れろ変態」
サヴィトリはカイラシュを押しのけ、素早く立ち上がった。左手中指にはめたターコイズの指輪を自分の唇に押し当てる。
ターコイズが色を失うと同時に、サヴィトリの手の中に青白い光が現れた。光は細長く伸びると、青みがかった透明な短弓の形をとる。手に持っている感覚はあるが、重さはほとんどない。
弦を引くだけで、弓と同色の矢が右手に現れる。
十年近く使っているがこの武器の原理はわからない。が、サヴィトリはそれでいいと思っている。使い方さえ心得ていれば充分だ。
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