第1章 1-1 シフト制にはワケがある

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「だからさっきも言ったでしょ。シフト制で付き合おうって。他に良い方法が浮かばなかったんだもん」  サヴィトリは背もたれに身体を預け、子供っぽく頬を膨らませる。頭頂部に差し込まれたティアラの重さや、身体を覆う豪華なドレスに疲れてしまった。 「はぁ!?」  ナーレンダは勢いでシフト表を握り潰す。  円卓に座る他の二人は事態を静観している。 「もちろん各々仕事や急な所用が入ることもあるだろうから、日にちの変更は受付ける。が、原則として一週間前には申告するように」  サヴィトリはナーレンダを無視して話を進めた。ナーレンダは細かいことを気にしすぎるきらいがある。 「サヴィトリ様。醜聞(しゅうぶん)にたかる(はえ)はもう飛び立ったようですよ」  カイラシュがそっと耳打ちをする。  爽やかな柑橘の香りがサヴィトリの鼻腔をくすぐった。カイラシュはいつもこの香りを身にまとっている。  サヴィトリは再び会議室の大扉を見た。先ほどと変わりないように思える。  しかしカイラシュの見立てはいつでも正確だ。数刻もしないうちに「クベラ国第一王女、陽光姫が色に溺れた」というような内容のゴシップが王都中に広まるだろう。
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