2-2 襲撃者

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「びっくりした。馬車をひっくり返されるとは思わなかったよ」  サヴィトリは氷の弓をしまい、ふーっと息を吐いた。氷の弓は、サヴィトリの手から離れると自動的に指輪へと戻る。  馬車を引いていた馬は二頭とも逃げ、車体は横倒しになっていた。御者の姿もない。 「このまま雨に濡れていてはお身体に障ります。適当な宿場に向かいましょう」  カイラシュは雨から守るようにサヴィトリの肩を抱く。  サヴィトリの心臓がどきっと大きく鳴る。急に息がしづらくなった。 (……んー? 運動不足かな。最近あんまり戦うこともなかったし)  サヴィトリは胸を押さえ、意識して呼吸をする。  吸う時よりも吐きだす時の方が苦しい。何か、胸の中で落ち着きのない小動物が動きまわっているかのようだ。 「失礼いたします」  短く断りを入れ、カイラシュはサヴィトリを横抱きにした。見かけによらずカイラシュは力があり、抱え方が安定している。
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