2-2 襲撃者

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「えっ、カイ? 何?」 「ご気分が優れないようにお見受けいたしましたので」 「大丈夫、そんなことない。歩けるよ」 「では、恋人の振りの一環だとお思いください」  カイラシュは片目をつむってみせ、サヴィトリの返事も聞かず駆け出した。  サヴィトリは落ちてしまわないよう、カイラシュの首に腕をまわす。  カイラシュの首も腕も胸板も、間違いなく男性のものだった。自覚すると、途端に緊張でサヴィトリは身体が硬くなる。  今までに何度も、カイラシュに抱きあげられたことや、カイラシュの身体に触れたこともある。  それなのにどうしていまさら意識してしまったのか。明確な理由がサヴィトリにはわからなかった。 (恋人の振り。振り、か)  サヴィトリの口から意図せずため息がこぼれた。呼吸はまだしづらい。  雨に濡れたカイラシュの横顔は何故だかとても綺麗で、いつまでも見上げていられそうだった。
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