2-3 雨に濡れた身体を温めるには

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「濡れた服の洗濯と、王都までの移動手段の手配が終わりました。明日の昼過ぎには出立できる見込みです」  カイラシュは姿勢を正し、真面目に報告する。 「王都に戻るの?」 「明日改めてシシリー港に向かうと、次のイェル術士長のシフトに食い込みますので。一分一秒でも遅れると燃やされてしまいます。もっとも、サヴィトリ様がお望みとあらば、いついつまでも天国から地獄の果てまでいかなる場所へも喜んでお供いたしますが」 「それは大丈夫」 「はーい」  サヴィトリのつれなさを予想していたらしいカイラシュは軽い返事をし、洗面所の方へと消えていった。  今日宿泊する部屋はベッドが二台設置されているツインルームだ。高官や貴族御用達の宿というだけあって快適性・利便性に優れている。長期滞在もできるように設備や調度品が整えられていた。 「お風呂のご用意ができましたよサヴィトリ様」  洗面所からカイラシュが顔を覗かせた。  いささか言動におかしなところはあるが、カイラシュは異常に気が利く。身の回りのことを先んじてやってくれる。一緒にいると堕落した人間になってしまいそうだ。
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