2-3 雨に濡れた身体を温めるには

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「……え?」  カイラシュは自分が言い出したことにもかかわらず、ひどく面食らったような顔をしている。 「入ると言っているんだ。寒い。早く」  サヴィトリはカイラシュの腕を掴み、浴室に引っ張った。  カイラシュに先に入ることをすすめはしたが、サヴィトリ自身も相当寒が身に染みていた。底冷えしている感じがある。さっさと湯船に浸かりたい。 「え? 本当に? 待って、サヴィトリ様待って! ちょっと、え、ええっ?」 ◇ ◇ ◇ (色々早まった……)  湯船に肩まで浸かったサヴィトリは、両手で顔を覆った。  大人二人が充分足を伸ばして入れる円形浴槽の中。もこもこの濃密な白い泡と、ほんのり甘く爽やかな花の香りを間に挟み、向かい合う位置にカイラシュがいる。  カイラシュは化粧を完全に落としており、普段と印象がまるで違う。素顔の方が彫りが深く、眉や輪郭が直線的で男性っぽさが強い。  お湯に浸かっているおかげか、青白かったカイラシュの血色がだいぶ良くなっている。
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