2-3 雨に濡れた身体を温めるには

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「サヴィトリ様を恋い慕う一人の男として接します、と宣言したこと、よもやお忘れではないでしょうね。わたくしに対して警戒心がないのはありがたいことですが、ここまでくるといっそ試されているような気もします。それとも、実は誘ってくださっているのでしょうか。だとすればわたくしは機微を解せず野暮なことを申しあげました」  カイラシュは身を乗り出し、サヴィトリとの距離を詰める。 「ちがう! 誘うとか他意は何もなくて、カイの方が体調悪そうだったから、先に身体温めた方がいいなと思って。でもカイは私を優先するし、それはそれとして、寒いから早くお風呂に入りたい気持ちもあって……」  サヴィトリは浴槽の縁にしがみつき、しどろもどろになりながら弁解した。緊張のせいか妙に汗がふき出てくる。 「でしょうね」  カイラシュの声音は非難の色が濃い。 「サヴィトリ様にあと一割でもご婦人としての自覚と、自身に向けられた感情について察する能力があれば、話はもっと楽だったのですが」  カイラシュは指先で眉間を押さえ、ゆっくりと頭を振った。
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