2-3 雨に濡れた身体を温めるには

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「婦人? 感情?」  サヴィトリにはカイラシュの言わんとするところが理解できない。こういうところがダメなんだろうな、とは思う。 「サヴィトリ様の無頓着――いえ、ある種の無垢さは、悪意や害意とは無縁に、伸び伸びと育てられたからこその賜物でしょう。クベラ国における一般常識は、もう少し身に付けていただきたいですがね」  今日のカイラシュは小言が多い。 「……ごめんなさい」  生育環境に言及されるとサヴィトリは困ってしまう。  サヴィトリは生まれて間もなく養父に引き取られ、異国の森の中で、ほとんど他者と関わることなく暮らしてきた。自分に常識がないのもわかっているが、十数年かけて(つちか)った性質はなかなか変えられない。 「わたくしの方こそ出過ぎたことを申しあげました。ですがヴィクラム殿のシフトが心配です。あれは据え膳の皿まで貪るケダモノです。くれぐれも今のような状況に陥ることのないようお願い申しあげます」 「はあ。うん」  サヴィトリはとりあえず頷いておく。
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