2-4 泡沫の時間 ★

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「んっ……子供じゃないんだから、洗ってくれなくていいっ」 「サヴィトリ様のお世話をしろと、タイクーンから仰せつかっております」 「いま私に何をしているかタイクーンに報告できるのか」 「もちろん。事細かに情感たっぷりにお伝えできますよ」 (くそ、こいつ変態だった……)  サヴィトリは心の中で頭を抱える。 「どちらかといえば、困るのはサヴィトリ様の方では? そもそもわたくしをここに引き入れたのはサヴィトリ様ですし」  カイラシュは(あざけ)るように言い、今度はサヴィトリの左手を取った。指を根元から伸ばすように泡をなすりつけていく。  すっと何かが抜け落ちた気がして、サヴィトリの心臓に冷たいものが走った。  左手の中指からターコイズの指輪が抜かれている。 「カイ!」 「後でちゃんとお返しいたします。わたくしのわがままでしかありませんが、今はあの人の影を見たくないので」  カイラシュは拘束するように抱きしめ、鼻先でサヴィトリの後ろ髪をかき分けた。あらわになった白いうなじをちゅっと吸い上げる。
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