2-4 泡沫の時間 ★

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「隙を見せてはいけませんよ、サヴィトリ様」  まぎれもない男の力で、サヴィトリは手首を掴まれた。 「意志を踏みにじってでも、欲しくなります」  カイラシュはサヴィトリの手のひらに唇を押し当てる。  言葉にならない思いを込めているように、サヴィトリには見えた。 「どうしてカイは、私を……?」  サヴィトリはずっと疑問だったことを口にした。  補佐官と第一王女という関係ではあるが、ここまで好かれる理由が見つからない。補佐官と王族との婚姻禁止の法のこともある。カイラシュが何を考えて行動しているのかわからない。 「この状況で何を言ったところで、抱きたい口実にしか聞こえないでしょう」  カイラシュは自嘲(じちょう)するように薄く笑った。  不意に、サヴィトリの視界が大きくぶれた。焦点が合わない。頭ががんがんとうるさく痛む。 「サヴィトリ様?」  意識と身体が沈み、カイラシュの声がひどく遠くで聞こえた。
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