2-5 雨+のぼせ+湯冷め=?

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(いつ帰って来たんだろう)  もやがかった頭で、サヴィトリは懸命に記憶を掘りおこしてみる。  カイラシュを伴ってシシリー港に向かう途中で襲撃され、撃退した。雨が降る中、どうにか最寄りの宿に辿り着く。その後、何かがあった気がする。 (なんだっけ……)  サヴィトリの頭の中に断片的に映像が浮かぶ。 「起きたの? 具合はどう?」  ナーレンダに顔を覗き込まれ、サヴィトリの思考は中断した。 「……あづい」  サヴィトリが発した声はひどくかすれていた。口の中には飲み込む唾すらない。 「サヴィトリ様! サヴィトリ様! ああああああっ申し訳ございません! どうかこの愚かなわたくしめに風邪をうつしてくださああああああいいぃっ!」 「うるさい! 迷惑! 邪魔!」  半狂乱でサヴィトリにすがりついたカイラシュを、ナーレンダが蹴り飛ばした。部屋の外まで叩き出す。
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