2-5 雨+のぼせ+湯冷め=?

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「術法院」とは超然的技術である「術」の研究利用発展を目的として創設された王立の機関だ。  ナーレンダはそこに勤める術士で、主に「術具」の開発に携わっている。術具というのは術の力を動力源としたアイテムの総称で、その種類は兵器から日用品まで多岐に渡る。箱馬車に取りつけられていた防音装置も術具の一種だ。  術法院には医療部門もあり、薬品の精製や術による怪我の治療などもおこなっている。 「何か食べられそうなら持ってくるけれど、どうする?」  ナーレンダは身体を(かが)め、サヴィトリに目線を合わせて尋ねた。 「ん……ありがとう。食べる」  サヴィトリは慎重に発生する。喉も痛めているとわかれば、ナーレンダに余計な心配をさせてしまう。 「何度も言うけれど、僕が戻るまでおとなしくしてなよ」  ナーレンダはサヴィトリの頭をぽんぽんと撫で、グラスを受け取った。一瞬、いぶかしげな顔をしたが、何も言わず部屋から出ていく。  サヴィトリが赤子の時からの付き合いであるせいで、ナーレンダは何かと子供扱いをしてくる。
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