第3章 3-1 かごの中のお菓子(ナーレンダ視点)

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第3章 3-1 かごの中のお菓子(ナーレンダ視点)

 ドーナツ。クッキー。チョコレート。  キャラメル。マフィン。ロリポップ。  どれを食べようか迷った結果、一番最初に目についたリングドーナツに手を付けた。  元宮廷調理師見習いで近衛兵――今ではいち地方領主にまでなったジェイが作ったものだ。胡散臭いへらへら顔は気に入らないが、料理の腕だけは買っている。  サヴィトリなんかは完全に胃袋を掴まれているらしく、食事の大半をジェイに作らせていた。危険がないならどうでもいいけれど。 「イェル術士長ー、四股されるってどういう気分ですかー?」  僕個人に割り当てられた研究室の扉が開くなり、下品な声が飛んできた。  声の主は、術法院で働く同僚の准術士長(じゅんじゅつしちょう)ル・フェイだ。  ぱっと見は柔和な雰囲気の美女、と言ってやってもいい。中身は色々と腐りきって発酵が進んでいる。補佐官のカイラシュと通ずるところがあるかもしれない。
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