第3章 3-1 かごの中のお菓子(ナーレンダ視点)

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「うるさいな。わざわざそんなくだらないことを聞きに来たわけ? 僕は暇じゃあないんだよ」  僕は紅茶でドーナツを流し込み、しっしと手で追い払う仕草をした。 「そんな邪険にしなくったって。少しくらい教えてくれたっていいじゃないですかー。あの可憐で気性の荒い陽光姫は何を企んでいるんです?」  ル・フェイは意味ありげに眼鏡のブリッジを押しあげ、にやりと笑った。 「本人に聞けばいいだろ。あの子は隠し事が苦手だから全部吐くよ、どうせ」  僕は机に向き直り、引き出しから紙の束を取り出した。テストの答案用紙だ。今日中に採点を終わらせなければいけない。  僕は術法院以外に、術士養成学校で非常勤の講師としても働いている。シフトでサヴィトリに付き合わないといけないし、本当に忙しいんだ。
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