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「愛しの陽光姫に決まってるじゃないですか」
「燃やすよ?」
「愛しの、は否定しないんですね」
「うるさい!」
「指輪まで渡してリザーブしたのに白々しい」
「あれはそういうんじゃないって言ってるだろ。あの子が欲しがったからあげただけだ」
僕は自分の右手中指にはめた指輪に触れた。
サヴィトリの瞳の色に似た緑の輝石を戴く金の指輪。
あの子にあげたものは、この指輪と対のデザインだ。あの子と養父と、三人で暮らしていたハリの森を出る時に、別れのプレゼントとして渡しただけ。しかも十年ほど前、あの子が本当の意味で子供だった時のことだ。深い意味はない。
「じゃあ取られてもいいんですか」
ル・フェイがマフィンにまで手を伸ばしたので、僕は厳しく打ち払った。お菓子の乗った編みかごを自分の方に引き寄せる。
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