第3章 3-1 かごの中のお菓子(ナーレンダ視点)

4/7
前へ
/175ページ
次へ
「愛しの陽光姫に決まってるじゃないですか」 「燃やすよ?」 「愛しの、は否定しないんですね」 「うるさい!」 「指輪まで渡してリザーブしたのに白々しい」 「あれはそういうんじゃないって言ってるだろ。あの子が欲しがったからあげただけだ」  僕は自分の右手中指にはめた指輪に触れた。  サヴィトリの瞳の色に似た緑の輝石を戴く金の指輪。  あの子にあげたものは、この指輪と(つい)のデザインだ。あの子と養父と、三人で暮らしていたハリの森を出る時に、別れのプレゼントとして渡しただけ。しかも十年ほど前、あの子が本当の意味で子供だった時のことだ。深い意味はない。 「じゃあ取られてもいいんですか」  ル・フェイがマフィンにまで手を伸ばしたので、僕は厳しく打ち払った。お菓子の乗った編みかごを自分の方に引き寄せる。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加