第3章 3-1 かごの中のお菓子(ナーレンダ視点)

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「用件をはっきりと具体的に言ってよ。僕は暇じゃあない」 「えっと、俺に怒んないでくださいね」  人の話を聞いてないのかこいつは。暇じゃないからさっさと用件を言えって言ってるのに。 「さっき、サヴィトリが帰ってきました。なんか風邪を引いたっぽいんですけど、高熱出してて、意識ないです」 「はぁ!? なんでもっと早く言わないのさ!」  ちょっとどころか一大事だろう。状況把握能力が著しく欠けているんじゃあないのか。 「っていうかカイラシュと一緒に出かけたはずだろう。あいつは何してたのさ。ああ、いや、いい。詳しいことは本人に聞く。僕が行って容態を見るから、まずはサヴィトリの所に案内して」  ほとんど走るような速度で部屋を出る。  まったく、何をやってるんだあの子は。子供みたいに雨の中を走り回りでもしたのか。ちょっと目を離すとすぐこれだ。だから放っておけないんだよ。  僕はストレスのあまり前髪を引っぱるようにして掻きむしった。ぷちっと小さな音がし、頭皮が引きつれたように痛む。髪を引き抜いてしまったらしい。よくやってしまう悪い癖だ。  指に絡まった髪を振り払い、僕はさらに歩くスピードを速めた。
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