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ナーレンダは背負っていた荷物を地面に置き、前髪をかきあげた。
「君、何してるの」
自分の足にへばりつくサヴィトリをにらみつける。
「ついていく」
短く答えると、サヴィトリは短い手足にいっそう力をこめた。
今日は、術の才を買われ、クベラにある術法院で働くことになったナーレンダが森を出ていった日だ。
サヴィトリが物心つく前から、養父とナーレンダと三人で森で暮らしていた。それがずっと続くのだとサヴィトリは思っていた。
当時子供だったサヴィトリには、ナーレンダが出ていく理由が理解できなかった。それ以前に理由がなんであれ、ナーレンダと離れて暮らすということ自体が受け入れられない。
「馬鹿師匠に大きなお菓子の家を作ってもらう、ってことで納得したんじゃなかったっけ? それに、君がついてきたらあの甲斐性なしの師匠が独りになるだろう。三日とたたずに干からびるよ」
ナーレンダは諭すように、サヴィトリの金色の柔らかな髪を撫でた。
サヴィトリはいやいやと首を振る。
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