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「じゃあじゃあ、クーおとうさんもいっしょ」
「絶対にお断りだ」
ナーレンダは間髪入れず申し出を却下する。
このままでは埒があかない、と思ったのか、ナーレンダは力ずくでサヴィトリを足から引きはがした。ちゃんと自分の足でサヴィトリを立たせ、目線を合わせるためにしゃがみこむ。
サヴィトリはせまい眉間に皺を寄せ、何かをこらえるように口を引き結んだ。赤くふっくらとした頬はぷるぷると震え、緑色の大きな瞳は溜まった涙でうるうると揺らぐ。
ナーレンダは小さく息を吐き、力を抜いてやるようにサヴィトリの小さな頭をぽんぽんと撫でた。
サヴィトリは音がするほど首を左右に振り、まばたき一つせずにナーレンダの顔をじっと見つめる。少しでも目蓋を動かせば、涙が押し出されてしまいそうだった。
「……サヴィトリ、僕は聞きわけのない子は嫌いだよ?」
ナーレンダはわずかに語調を強め、弾力のある赤い頬を押し潰すように両手ではさみこんだ。薄く小さな唇がくちばしのようにとがる。
間の抜けたサヴィトリの顔を見て、少年は思わず噴き出した。
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