3-3 春の空の夢

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 サヴィトリは涙を引っこませ、握り拳でナーレンダを殴りまくる。殴り方を知らない子供の攻撃は、骨の出っ張りがかすったりなどしてかえって痛い。  ナーレンダはまぁまぁと押しとどめ、地面に置いた荷物をあさった。ほどなくして、中から空色の石がはまった銀の指輪を取り出す。ナーレンダの右手の中指にも、同じデザインの金の指輪がはまっている。  指輪を見とがめたサヴィトリはぴたりと攻撃をやめ、ナーレンダの髪と同じ空色の石に熱い視線を送る。 「なあに、それ」  問いかけに答えず、ナーレンダはサヴィトリの幼い左手を取った。人差し指から小指まで順に指先で軽く押していく。 「突然だけど、どの指がいい?」 「? えっと、まんなかー。いちばん長いゆびー」  サヴィトリはちょっと首をかしげ、左手の中指を動かす。
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