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「はいはい」
ナーレンダは微笑み、サヴィトリの中指に指輪を通した。短くぷくぷくとした指にその指輪は大きく、指にぶらさがってゆらゆら揺れる。
指輪を落とさないように、ナーレンダはサヴィトリの手を握らせた。
「そうだな……その指輪がちゃんと似合うようになるくらい。だいたい、十年かな。十年たって君のもらい手が誰もいなかったら、公共の福祉のために僕が尊い犠牲者となって、仕方なく君をもらってやってもいい。いいか、仕方なく、だ。だから、ついてくるなんて馬鹿なことは言わないように」
ナーレンダは真面目な顔を作り、サヴィトリの額を指先でつついた。
サヴィトリは額をさすり、自分の中指にある指輪を見た。しっかり握り締めていないと、すぐに落ちてしまう。
次に、ナーレンダの顔を見る。
サヴィトリは大きく頷いた。
「うん、いかない。ギセイシャになって」
「嬉しそうに言う台詞じゃあないんだけど……」
ナーレンダは困ったように笑い、再びサヴィトリの頭を撫でた。
(十年経っても迎えに来てくれないから、私はクベラに行ったのに。第一王女としての復権を望んでいたわけでも、次期タイクーンになりたかったわけでもなかったのに。いまさらこんなことを言っても、仕方ないけれど)
サヴィトリは自分の左手に触れる。そこには指輪はなく、十年間指輪をし続けていた痕跡だけがあった
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