3-4 大人扱い

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3-4 大人扱い

 ペンが走る音が聞こえる。  目蓋が持ちあがり、そこでサヴィトリは自分が眠っていたことに気が付いた。  何か夢を見ていた気がするが思い出せない。青空だけが目蓋の裏に残っている。  これといった目的なく、サヴィトリは上体を起こした。額に乗せられていたタオルが落ちる。  身体はまだ熱っぽくてだるい。汗をかいたのか、薄手の夜着が肌に貼りついている。 「ん、起きたのか。もしかして、うるさかった?」  机に向かっていたナーレンダはサヴィトリの方に顔を向けた。 「ううん。何してるの」  サヴィトリはゆっくりと頭を横に振る。 「テストの採点。これだけは終わらせないといけなくてね」  ナーレンダは持っていたペンの先で紙をつつき、肩をすくませた。  確かナーレンダは本業の他に術士養成学校でとっていると、サヴィトリは聞いたことがある。名家子息の家庭教師をしていたこともあり、カイラシュとヴィクラムはその時の教え子らしい。
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