3-4 大人扱い

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「ナーレ?」  サヴィトリは唾を飲み込み、金の瞳と目を合わせる。 「カイラシュに対してもこうだったんだろうな、って予想がつくのが嫌だよ。風邪で調子の悪い君にこんなことを言うのは(こく)かもしれないけれどさ。もっと警戒してくれてもいいんじゃない?」 「警戒? ナーレは私に危害を加えようとしているわけではないでしょう?」  サヴィトリにはナーレンダの真意が掴めなかった。  左手は拘束されているが、押し返せないほどではない。身体のだるさを差し引いても、ここからひっくり返してマウントポジションを取ることは可能だ。ナーレンダには運動関係の才能が一切ない。 「体術なら自分の方が上だからどうとでもなる、とか思っていそうなのもやだな。これもすべては君の素性を(うれ)い、強く過保護に育ててしまった、我らがお師匠のせいだろうね。まったく」  ナーレンダの言う「お師匠」というのはサヴィトリの養父のことだ。元々はクベラ国の太師だったが、「災厄(やくさい)の子」として生まれてすぐに処分されそうになっていた第一王女——サヴィトリをさらい、隠遁(いんとん)した。  当時何があったのか、何故自分が「災厄の子」と呼ばれていたのか、赤子だったサヴィトリにはわからない。
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