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「ナーレ?」
サヴィトリは唾を飲み込み、金の瞳と目を合わせる。
「カイラシュに対してもこうだったんだろうな、って予想がつくのが嫌だよ。風邪で調子の悪い君にこんなことを言うのは酷かもしれないけれどさ。もっと警戒してくれてもいいんじゃない?」
「警戒? ナーレは私に危害を加えようとしているわけではないでしょう?」
サヴィトリにはナーレンダの真意が掴めなかった。
左手は拘束されているが、押し返せないほどではない。身体のだるさを差し引いても、ここからひっくり返してマウントポジションを取ることは可能だ。ナーレンダには運動関係の才能が一切ない。
「体術なら自分の方が上だからどうとでもなる、とか思っていそうなのもやだな。これもすべては君の素性を憂い、強く過保護に育ててしまった、我らがお師匠のせいだろうね。まったく」
ナーレンダの言う「お師匠」というのはサヴィトリの養父のことだ。元々はクベラ国の太師だったが、「災厄の子」として生まれてすぐに処分されそうになっていた第一王女——サヴィトリをさらい、隠遁した。
当時何があったのか、何故自分が「災厄の子」と呼ばれていたのか、赤子だったサヴィトリにはわからない。
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