3-5 それって迷信ですよ?

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3-5 それって迷信ですよ?

「風邪の潜伏期間と回復にかかる時間がほとんど一緒であるため、あたかもうつして治ったように見えるだけです。そんな俗説を信じるほど頭をやられているのですかイェル術士長。多忙でお疲れなのではないでしょうか。少し、いえ、いっそ一生お休みになられた方がよろしいかと存じます! それとはまったく関係なしにどういう物理法則が働いたのか皆目見当もつきませんがわたくしの手が滑ってしまいましたああああああっ!!」  推理や推測が必要ないほどあからさまな誰かさんの早口とともに、手のひらサイズの何かが飛来した。カンッ! と硬質な音を立ててナーレンダの後頭部にヒットする。  その勢いでナーレンダとサヴィトリの額同士がぶつかり、二人はほぼ同時に自分の額を押さえた。 「いっ! た、い……」  サヴィトリの目尻に涙が溜まる。岩に叩きつけられたかのように額がずきずきと痛む。目の前で星が白くちかちか(またた)いている。  ナーレンダは体勢を崩し、ベッドから転げ落ちていた。二次災害の方が被害甚大だ。
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