3-5 それって迷信ですよ?

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「大丈夫ですか、サヴィトリ様」  サヴィトリの目の前に菫色のシルエットが現れた。目を凝らすと次第に詳細が描き込まれていき、やがてカイラシュの形をとる。 「何してくれてんのさこのクサレ補佐官!」  ナーレンダの怒声と、ぱちんと指を鳴らす音が聞こえた瞬間、カイラシュが青い炎に包まれた。 「熱い熱い熱いっ! 本気で殺すつもりがないのは承知していますが結構ほんとに熱いんですよこれ! 気軽に燃やさないでください! たまに髪とか焦げるし……ああっつ!」  カイラシュは床を転げまわる。床に敷かれた絨毯(じゅうたん)に延焼はしていない。  ナーレンダの炎は対象だけを燃やすことができる。なおかつ威力調整が難しいとされる火術にもかかわらず、今カイラシュに放ったような威嚇用の炎から、金属すら溶かす業火まで自在に操ることができた。 「他人のシフト中は干渉しないんじゃあなかったわけ?」  目の据わったナーレンダは、ブーツの(かかと)でカイラシュを踏みにじる。
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