3-5 それって迷信ですよ?

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(仲良いなあ。いつまでやるんだろう)  すっかり蚊帳の外に追いやられたサヴィトリは、ベッドサイドに落ちていた木製の小箱を拾い上げた。おそらくカイラシュが投げたものだ。  上蓋を真上に持ち上げて開くと、中には見覚えのあるターコイズの指輪が納められていた。  サヴィトリはすぐに指輪を左手の中指にはめる。金属の冷たさに一瞬びくっとしたが、すぐに皮膚のようになじんだ。  ふとめまいを覚え、サヴィトリはベッドに横になった。額に手を当てる。まだ熱い。身体は、汗が冷えて少し寒かった。 (カイが来なかったら、どうしてたかな)  鼻先にナーレンダの甘い香りが残っている。  その時その瞬間よりも、後になって思い出した時の方が恥ずかしい。  サヴィトリは身体に毛布を巻き付け、緩く目蓋を閉じた。  ナーレンダとカイラシュは終わりの見えない罵り合いを続けている。  うるさいな、と思っていたものが次第に意味をなさない音へと変わり、やがて聞こえなくなった。
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