第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

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第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

 左丞相派閥の人間に呼び出され、これといって記憶しておく必要のないことを延々聞かされた帰り、カイラシュに因縁をつけられた。 「ヴィクラム殿。次はあなたのシフトですが、サヴィトリ様におかしな真似をすれば磔刑(たっけい)に処します。くれぐれも言動にお気を付けください」  女のような顔と装いをしたカイラシュは、その外見に見合わないドスのきいた低い声を発した。  サヴィトリがいない時はだいたいいつもこんな感じだ。抜き身の刀に似ている。  シフト中は互いに不干渉でも、その期間外に危害を加えられるのであれば、紳士協定は意味がないのではないか。重箱の隅をつつくのが趣味なナーレンダ抜きで話を進めた時点で担がれていたのかもしれない。  ここで下手に何か言うと延々と絡まれるため、俺は会釈(えしゃく)だけして通り過ぎた。  しかし「たっけい」とはなんのことだろう。  未知の単語に思いを馳せながら王城の第三厨房へと向かっていると、今度はナーレンダと鉢合わせた。
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