第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

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「ああ、なんだ。図体がでかいのがいると思ったらヴィクラムか」  ナーレンダの顔はゆで上げられたタコのように赤かった。おまけにごほごほとせき込んでいる。  どう見ても風邪だ。出歩かないでほしい。 「改めて言っておくけれど、二人きりだからといって、カイラシュみたいにあの子に変なことをするんじゃあないぞ。火葬の手間がいらなくなるようにしてやるからな」  具合が悪いと術の制御がきかなくなるのか、それとも単純に(おど)しとしてやっているのか、ナーレンダの周囲に鬼火のようにいくつもの青い炎が現れた。  保護者面しているこいつが、もっとも性質(たち)が悪い。鈍いと言われる俺ですら、ナーレンダが彼女にどんな感情をいだいているのかわかる。
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