1-2 男たちにもワケがある

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「百度愛を囁いてもまったく響く気配がないので、こたびの計画に乗じ、強攻策に出ることにしました。わたくしは恋人の振りではなく、サヴィトリ様を恋い慕う一人の男として接します」  カイラシュはサヴィトリの手を握りしめ、まごうことなき男の力で引き寄せた。  なんの備えもしていなかったサヴィトリは簡単にカイラシュの腕の中に納まってしまう。爽やかなはずの柑橘の香りがいつもと違うように感じられた。 「覚悟してくださいね」  カイラシュはほとんど吐息のような声で囁くと、サヴィトリの頬にちゅっと軽くくちづけた。  サヴィトリは叩く勢いで自分の頬を押さえ、カイラシュの顔を見上げる。言葉は一文字も出てこなかった。状況がうまく飲み込めない。身体の至る所で、どきどきと脈打つ音がする。
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