第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

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 それなのに、何故こうも気になるのか。単に物珍しいというだけだろうか。他の女と同様に、一度抱けば気が済んでしまうのか。 「引き寄せた張本人に、いまだに自覚がないのが不思議ですよ。会議室であんなこと言われたのに。もうちょっと『私みんなから口説かれちゃうの? えーどうしよう!?』って動揺してくれてもよくありません?」 「あれはそういうタイプではないな」  事情の把握もそこそこに、敵対陣営の殲滅(せんめつ)を掲げるような女だ。普通の娘が持ち合わせる可愛げなど期待するだけ無駄だろう。 「でも、サヴィトリが住んでいた森を出てクベラに来たのって、ナーレンダさんに会うためですよ。王女として復権し、跡を継ぐためじゃなくて」  森で暮らしていたサヴィトリを迎えに行ったのは右丞相派閥の者で、ジェイ殿はその護衛として同行していた。  俺がサヴィトリと出会ったのはちょうどその頃、あいつが森からクベラへと向かう道中のことだ。街道に現れた魔物の討伐任務の最中だった。  記憶に触発されたのか、額——かつて頭突きを食らった箇所(かしょ)がずきずきと痛みはじめる。
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