第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

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「ナーレンダのやつがもう少し素直であれば、こんなにも糸が入り組むことはなかっただろうな」  俺はグラスに中途半端に残っていたものを飲み干し、また酒を注いだ。 「入り組まない方が良かったですか?」  ジェイ殿は表情の読めない笑顔で尋ねた。 「さあ。俺はあまり行儀が良くないからな。本当に欲しければ、他人のものでも手を出すだろう」  俺は額を撫で、薄く笑った。 「クベラが誇る『抱かれたい男No.1』に本気を出されると、俺なんか絶望的に勝ち目ないんですけど」  ジェイ殿は頬を指先で()き、眉尻を下げた。  大衆紙のアンケートだったかで、そういうものに選ばれたと聞いたことがある。俺が所属する魔物討伐専門部隊「羅刹(らせつ)」の三番隊隊士たちから冷やかされた。 「あいつから抱かれたいと思われなければ、有象無象の意見など意味がないだろう」 「いつか言いたいその台詞」 「言えばいい」 「童貞に無理言わないでください」 「適当な相手か店で捨ててくればいいだろう。後生大事に抱えている気持ちがわからない」 「今日はもう帰ってもらっていいですか」
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