第4章 4-1 絡まった糸(ヴィクラム視点)

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 言うが早いか、ジェイ殿は酒瓶を下げてしまった。  ジェイ殿にはしばしば反応速度で負ける。一度手合わせをしてみたいが、「俺は最弱ですから」と謙遜してなかなか応じない。 「仕方がない。また来る」  俺は酒と料理を平らげ、席を立つ。  元々長居をするつもりはなかった。明日からは俺のシフトだ。深酒をしてヘマをすることはないが、気を付けておくに越したことはない。 「サヴィトリに変なことしないでくださいね」  去り際に、今日三度目になる抽象的な忠告を受けた。他の二人が言っていたのと同じ意味だろうか。 「みな過保護だな」  思わずため息が出た。  ナーレンダの件だけではなく、全員がサヴィトリのことを気にかけすぎていることも、糸が絡まった一因であるような気がした。 「どいつもこいつも厄介だな、本当に」  俺は、再び痛み出した額を押さえた。
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