第1章 1-1 シフト制にはワケがある

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第1章 1-1 シフト制にはワケがある

「A君が好き。でもB君もちょっと気になる……ああ、どっちを選べばいいの――などという軟弱なことを私は言わない。全員平等に好きだ。だからいっそのことシフト制で付き合おう」  円卓の上座に座るサヴィトリは、意志の強い濃い緑色の瞳を見開き、迷いのない明瞭な声で告げた。部屋の外にいる人間にも伝わりそうなほどよく響く。  会議室にはサヴィトリの他に四人の男がいた。サヴィトリ――美しい金の髪から「陽光姫」とあだ名されるクベラ国第一王女の突拍子もない発言に、それぞれ異なる反応を示している。 「サヴィトリ様、先にシフト表をお配りした方がよろしいかと」  サヴィトリのななめ後ろで(うやうや)しく侍っているカイラシュが控えめに提案した。 「そうだな。頼む」  やっぱり絶世の美女にしか見えないな、と思いながらサヴィトリは頷いた。  王の補佐官であるカイラシュは女の装いをしているのが常だ。「女は女を警戒せず、男は女に油断する。弱輩ゆえの未熟さを身なりで補う」というのが理由らしい。実際出会った当初、カイラシュのことを女性だと思って接したサヴィトリは痛い目を見た。
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