久しぶりだね

久しぶりだね。

久しぶりね。

何年ぶりかな？

何年ぶりかしら？

１５年？
いや、１６年？

２０年。

２０年？
そんなになる？

なるわ。
わたし、憶えてるの。
あなたが別れ際にわたしに言った言葉。

、、、、
ぼく、なんて言った？

憶えてないの？

あ、ああ、ごめん憶えてない。

あなたはね、別れ際に、わたしにこう言ったわ。
「君のピアニストの才能はすばらしい。けど妻としてはどうかな。、、」

あ、いや、ぼくそんなこと言ったっけ？
そんなこと、、

冷たい人だった。

、、、、
あ、あれはぼくの嫉妬さ。
君の才能にぼくは嫉妬してた。
コンサート会場をいつも満席にする君の才能に、ぼくは嫉妬してた。、、
なんせあの頃のぼくは、しがない「コメディ書き」だったから。、、

、、、、、、
、、、、
いま、何やってるの？

い、今かい？

少しはわたしを見返せてる？

あ、ああ、ぼくもあれから頑張ったからね。
君に負けまいと頑張った。、、

よかった。
、、、
で？、いま何やってるの？

管理人やってる。マンションの。

、、、、、
そう、、頑張ったのね。
あなたらしい。、、

ありがとう。
、、、
君、結婚は？
結婚したの？

、、、、
したわ。
二度。

、、、、
今はひとり？

ひとり。

ぼくもさ。
ぼくもひとり。ずっとひとり。だった。

、、、
そう。

あ、あのさ、もし、もしもだけど、
もしよかったら、、

なに？

もし、君さえよかったら、、

おわり