カンナが咲いたら夏になる

3

「カンナちゃんいるかしら？次の会議用の資料のことで～」

よくある、向かい合わせのデスクが続いているオフィスの一角。反対側の席の後輩を訪ねてきたのは、別部署の同期だった。キョロキョロしながら歩いているので、俺は後輩を呼ぼうと首をのばす。

「ん？いないのか？」

半年前に交換したばかりのこのパソコンは業者の手違いでやたらディスプレイのサイズが大きく、ちょっと首をのばしたくらいでは反対側の様子がよくわからない。

「いやでも。あの子の頭はいつも見えてるよな？」

そうだよな。後輩の在不在はよくわかるんだった。でもなんでだ？あっちの方が背が低いはずなのに？なんて考えていると、同期が俺を見つけて小走りに近づいてきた。