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「そっ、そうです。健康法です。それより仕事の事でしたよねっ!?」
明らかに慌てた様子の後輩が水を向けると、同期も資料を広げだす。すぐに向こう側の席で打ち合わせが始まった。
「ってわけでね。じゃあよろしくね~」
要件を述べた同期がそう言って去っていくと、後輩はさっそくキーボードをたたき始めた。真面目そうに作業しているが、足はブラブラしてるんだろうな。なんか微笑ましいな。
「……なあ」
「はい?」
小さなおでこにむかって言うと、大きな瞳がすぐにこちらを向く。
「どうかしましたか?」
「えっと……和食と洋食ってどっちが好き?」
何か話したいと思いつつも。俺の口は心底どうでもいい質問を投げかけていた。
「えっと。洋食ですね」
仕事中だというのに、馬鹿みたいな質問に笑って答えてくれる後輩。ああ、いい子でやっぱり可愛いな。健康法だかなんだか知らないが、事務椅子がその高さまでのびていることに心から感謝する。
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